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概要

  • AIの潜在力を十分に活用できる体制が整っている企業は昨年の6%から4%に低下し、日本企業のAI成熟度における現実が浮き彫りになりました。
  • 多くの企業がAIに積極的に投資しており、41%の企業が現在のIT予算の10〜30%をAI導入に充てていますが、投資のリターンは期待に達していません。
  • 約半数(51%)の企業が、AI戦略を早急に整備する必要があるとし、今後1年以内に適切な対応ができなければ悪影響が生じる可能性があると感じています。

シスコシステムズ合同会社(本社:東京都港区、代表執行役員社長:濱田 義之、以下 シスコ)は、「Cisco 2024 AI Readiness Index(シスコ2024年AI成熟度指標)」の結果を発表しました。この指標によると、AI技術の導入・活用に完全に備えているのはわずか4%で、昨年の6%から低下しました。この低下は、企業がAIを採用、展開、そして効果的に活用する上で直面する課題を浮き彫りにしています。市場が急速に進化し、AIが事業運営に大きな影響を与えると予想されることを考えると、この準備態勢のギャップは特に深刻です。

この指標は、アジア太平洋地域(APJC)の14市場における従業員500名以上の組織に属するビジネスリーダー3,660名(グローバル全体で30市場における7,985名)を対象として実施したダブルブラインド調査に基づいています。調査対象のビジネスリーダーは、組織内でAIの統合および展開を担当する責任者をしており、企業のAI成熟度を「戦略」、「インフラストラクチャ」、「データ」、「ガバナンス」、「人材」、「文化」の 6 つの主要な柱をもとに評価されています。

緊急対応の必要性
AIは事業戦略の要となっており、企業にとってAI技術の導入と展開に対する緊急性が高まっています。日本では95%の企業が昨年に比べてAI導入の緊急性が増していると報告しており、その推進力は主にミドルマネジメント層や各事業部門のリーダーから生まれています。さらに、企業はAIに多大なリソースを投入しており、41%がIT予算の10〜30%をAI導入に充てていると報告しています。

サイバーセキュリティ、ITインフラストラクチャ、データの解析および管理といった戦略分野への多額のAI投資にも関わらず、多くの企業が期待どおりのリターンを得られていないと回答しています。

シスコのアジア太平洋地域(APJC)プレジデントのデイブ・ウエスト(Dave West)は次のように述べています。「企業がAI導入を加速する中、包括的な実装アプローチを採用し、AIの目標と準備体制を一貫性のある形で結びつけることは非常に重要です。今年のAI成熟度指標によると、AIの潜在力を十分に活用するためには、増加するAIワークロードに伴う電力需要やネットワーク遅延に関する要件に対応できる最新のデジタルインフラが必要です。そして、ビジネス目標を達成するためには、適切な可視性でこのインフラを支えることが不可欠です」

主な調査結果

  • AI成熟度の全体的な低下とインフラの課題:すべての指標でAI導入準備度が低下し、特に大きく低下したのがインフラストラクチャの成熟度で、コンピュータ、データセンター ネットワークパフォーマンス、サイバーセキュリティなど多くの領域でギャップが見られます。現在および将来のAIニーズに対応できるGPUを持っている組織はわずか14%で、AIモデルのデータをエンドツーエンドの暗号化、セキュリティ監査、継続的な監視、迅速な脅威対応により保護できる組織は16%でした。
  • 企業の投資と期待に対する成果の不足:日本企業にとってAIはこの1年で優先的な投資分野となっており、41%がIT予算の10〜30%をAIプロジェクトに割り当てています。AI投資では、「サイバーセキュリティ(32%の企業が完全導入または高度な導入を実施)」、「データ管理(25%)」、「IT インフラストラクチャ(24%)」の3つの戦略分野に集中しています。企業がAIで達成を目指す主な成果には、「システム効率、プロセス、業務、収益性の改善」、「革新を進め、競争力を維持できること」、「リスク管理の強化と事業リスクの軽減」の3つが上位として挙げられました。
  • 企業の多くが期待通りの成果を得られていない:投資額が増えているにも関わらず、平均で約40%の企業が、現在のプロセスや業務の拡充、支援、自動化において、まったく成果がない、または期待どおりの成果が得られていないと回答しています。
  • マネジメント層から成果を求める強いプレッシャー:AIテクノロジー導入に関する経営陣からの圧力と緊急性は高まっています。AI展開の担当部門としては、ミドルマネジメント層が約半数(51%)、次いでCEOおよびマネジメント層(44%)、コーポレート部門責任者(34%)が推進役として挙げられています。緊急性が高まる中、日本企業はAI導入を加速化し、投資を増強して障壁を乗り越えAIによる変革を進めようとしています。実際、組織の15%が今後4〜5年でIT予算の40%以上をAI 投資に充てる計画であり、同水準のIT予算を現在AIに充当している企業が1%であるのに対し、大幅な増加を意味します。

企業はAI活用に向けた準備をさらに進める必要性を認識しています。日本では56%の企業がITインフラストラクチャの拡張性、柔軟性、管理性を向上させることが、全般的なAI成熟度を高めるための最優先事項だと考えており、対応すべきギャップを企業が認識していることが示されています。

スキルと人材のギャップに対処
各柱に個別の課題が存在する一方で、全体に共通する1つのテーマが浮上しました。AIスキルを持つ人材の不足です。企業はこれを「インフラストラクチャ」、「データ」、「ガバナンス」のトップ課題に挙げており、AIイニシアチブを推進するためには熟練した専門家が不可欠であることを強調しています。

シスコのアジア太平洋地域(APJC)人材およびコミュニティ担当バイスプレジデントのアヌパム・トレハン(Anupam Trehan)は次のように述べています。「企業導入競争が加速する中、人材は企業にとって主要な差別化要因となります。AIのさまざまな側面ですでにスキルを持つ人材の不足が顕在化しています。企業は増大するニーズに対応するために既存の人材に投資する必要があると同時に、民間セクター、公共セクター、教育機関、政府などのあらゆるステークホルダーが連携して地域の人材育成に取り組み、エコシステム全体でAIの非常に大きな潜在力のメリットを得られるようにすることが重要です」

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