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調査によると、AIの展開、活用に向けた十分な準備が整っている日本の組織はわずか6%で、半数以上が今後12ヵ月以内にアクションを起こさなければ事業への影響が非常に懸念されると回答

概要

  • 日本の組織の97%が、過去6ヵ月で社内におけるAI技術導入の緊急性が高まったと回答
  • 「戦略」、「インフラストラクチャ」、「データ」、「ガバナンス」、「人材」、「文化」の6つの主要な事業の領域で大きなギャップが存在しており、企業の94%はAIを事業に取り入れる体制が十分に整っていないと回答
  • 企業は時間との勝負に直面しており、55%は1年以内にAI 戦略を展開できなければ事業に悪影響が出ると回答。

 

人工知能(AI)の展開、活用に向けて十分に準備ができている日本の組織はわずか6%であることが、シスコシステムズ合同会社(本社:東京都港区赤坂、代表執行役員社長:中川いち朗、以下 シスコ)が公表した初の調査「AI Readiness Index(AI成熟度指標)」で判明しました。世界の8,000社以上を対象としたこの調査は、AIが普及し、世代がシフトしてビジネスや生活のほとんどすべての領域に影響を与えている状況を反映して策定されました。このレポートでは、企業がAIを活用、展開できる体制を整備できているかどうかに焦点を当て、近い将来に深刻なリスクとなりうる、主要な事業の領域やインフラストラクチャにおける重大なギャップの存在を明らかにしています。

この新たな調査では、AIが数十年をかけて徐々に普及してきた一方、生成系AIが進化し、ここ1年で一般に利用可能となったことで、このテクノロジーによってもたらされる課題、変化、新たな可能性に対しこれまで以上に注目が集まっていることが示されています。回答した組織の81%が、AIは自社の事業運営に大きな影響を与えると考えている一方で、データプライバシーやセキュリティに関する新たな問題も発生しています。そして、企業は自社データと連携しAIを活用することが最も困難だと感じていることも示されています。実際、その理由について、91%の回答者が、組織全体でデータが共有されず、サイロ化されているためだとしています。

一方、ポジティブな結果も示されています。日本の企業はAI中心型社会の到来に備え、さまざまな手だて     を講じています。AI戦略の策定については、92%の組織がすでにしっかりとしたAI戦略を整備しているか、策定を進めている段階にあります。半数以上(54%)の組織が「先行者(Pacesetter)」または「追随者(Chaser)」(十分/部分的に対応できている)に、16%が「遅滞者(Laggard)」(対応できていない)に分類されています。このことから、経営幹部やIT責任者が非常に注力して取り組んでいることが分かります。この背景には、ほとんど(97%)の回答者が過去6ヵ月で社内におけるAI技術の展開の緊急性が高まったと回答しており、ITインフラストラクチャとサイバーセキュリティがAI展開の最優先分野として挙げられています。

シスコのエグゼクティブバイスプレジデントでアプリケーション担当ゼネラルマネージャー、最高戦略責任者のリズ・セントーニ(Liz Centoni)は次のように述べています。「企業はAIソリューションの展開を急いでおり、社内のインフラストラクチャをAIワークロードの要件にうまく対応させるために、どこに投資すべきかを評価する必要があります。また組織は、ROI、セキュリティ、特に責任を明確にするAI活用のあり方をその文脈の中で徹底させることも必要です。」

主な結果

全体として「先行者(Pacesetter)(十分対応できている)」の企業はわずか6%という厳しい結果となり、日本の企業の3分の2(74%)が「遅滞者(Laggard)(対応できていない)」16%または「後発者(Follower)(あまり対応できていない)」58%となっています。主な結果は以下のとおりです。

  • 緊急度:事業に悪影響が出始めるまで長くて1年。AI 戦略を1年以内に導入しなければ、事業への深刻な悪影響が出始めると考えている日本の回答者は55%でした。
  • 戦略:第一歩となる戦略については順調に対応が進んでいる。先行者(Pacesetter)または追随者(Chaser)の組織は54%、遅滞者(Laggard)は16%でした。また、92%の組織がすでにしっかりしたAI戦略を整備している、あるいは策定を進めている段階で、良好な傾向が見られています。一方、さらに取り組みが必要であることも示されています。
  • インフラストラクチャ:ネットワークがAIワークロードに対応できていない。世界の企業の95%がAIによりインフラストラクチャのワークロードが増すと認識している一方、日本では自社のインフラストラクチャの拡張性が高いと考える組織は26%にとどまっています。社内の既存のITインフラストラクチャにより、新たなAIの課題に対応できるかどうかについて、半数以上(69%)の企業が、ある程度の拡張性がある、またはあまり拡張性がないと回答しています。AIの能力の拡大や処理ニーズへの対応においては、ほとんど(87%)の企業が、現在や今後のAIワークロードに対応するためにデータセンターGPU(画像処理装置)がさらに必要になるとしています。
  • データ:データをAIに対応させることの重要性は無視できない。AI運用に必要なバックボーンとなるデータは、最も対応が弱い領域であり、すべての領域の中で遅滞者(Laggard)の比率が最も高く(30%)なっています。全回答者の91%が、データ共有のサイロ化、断片化されたデータが組織内にある程度存在すると答えています。これは重大な問題で、さまざまな場所にあるデータを統合し、AIで活用できるようにするのが難しく、それらを活用する可能性を十分に引き出すことができなくなります。
  • ガバナンス: AI方針の整備が遅れている。データプライバシー、データ主権、世界各国の規制の把握と遵守といった、信頼、信用の低下を招く恐れのあるあらゆる要素を検討、管理するために必要な対策として、包括的なAI方針を整備している組織は16%にとどまりました。また、データとアルゴリズムの両方について偏見、公平性、透明性の考え方も慎重に検討する必要があります。
  • 材:AI人材のニーズが新時代のデジタルディバイドを浮き彫りにする。回答者の82%が、現従業員のスキルアップに投資する予定だとしている一方、スキルアップ可能な人材が十分確保できるかどうかは疑問だという回答も41%あり、AIによる格差が出現していることが示唆されました。組織の中で、AIによってもたらされる変化を受容する意向が最も高いのは取締役会や経営陣で、それぞれ72%、74%と高い意向またはある程度の意向を示しました。一方、中間管理職の33%がAIによる変化についてあまり受け入れられない、またはまったく受け入れられないとしており、中間管理職を巻き込んでいくためのさらなる取り組みが必要です。また従業員については、3分の1以上(41%)の組織が、自社の従業員がAIの導入に消極的、または明確に抵抗感を示していると回答しています。
  • 文化:対応はほとんど進んでいないが、優先的に取り組む意向は高い。この領域では先行者(Pacesetter) の割合(5%)が全カテゴリーの中で最も低くなりました。特に、AIを広く導入するために経営計画を変更した企業はわずか17%でした。経営幹部は社内のAIの変化を受け入れる意向が最も高く、率先して包括的な計画を策定し、受容度が相対的に低い中間管理職や社員に明確に伝え、主導していく必要があります。一方、ポジティブな側面として、高いモチベーションが示されています。半数以上(62%)が、AIの導入について自分の組織がある程度の切迫感または高い切迫感をもっていると回答しています。変化に抵抗感を示した回答者は2%のみでした。

Cisco AI Readiness Index

Cisco AI Readiness Index(シスコ AI 成熟度指標)は、企業でAIの統合と導入を担当しているビジネスリーダー8,161名に対して行われた二重盲検調査に基づくものです。この調査は、500人以上の従業員を抱える、30の国または地域の企業を対象として実施しました。この調査では回答者のAI成熟度を「戦略」、「インフラストラクチャ」、「データ」、「人材」、「ガバナンス」、「文化」の6つの主要な領域で評価しました。

6つの領域の49指標で企業を調査し、各領域における成熟度を判定したほか、回答者の組織の全般的な成熟度スコアも算出しました。各指標は、それぞれの領域に対応できる体制を整えるために相対的にどの程度重要であるかに基づき重み付けしました。組織の成熟度については、総合スコアに基づき十分に成熟している「先行者(Pacesetter)」、やや成熟している「追随者(Chaser)」、あまり成熟していない「後発者(Follower)」、まったく成熟していない「遅滞者(Laggard)」の4グループを設定しました。

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