ヴィカス・ブターニー(Vikas Butaney):2020年10月15日
シスコ
バイス プレジデント 兼 ジェネラルマネージャー、IoTプロダクト マネージメント
特に多くの課題を抱える業界、たとえば6,800億米ドル規模の鉱業/鉱山業界におけるオートメーションへの道筋を見てみましょう。多くの産業同様、鉱業界は特に危険できつく、労働環境が遠方にあることなどが要因で、深刻な人手不足に直面しています。鉱業は、一般的に、何カ月も猛暑が続くオーストラリアの中心のような過酷な気象や、作業員が何週間、何カ月もの間、家族と離れて簡素な宿舎で過ごさなくてはならないといった厳しい条件があります。
これらの問題を解決するために、鉱業界は自律走行車両と自律運行を実現しようとしています。自律運行により、作業員に対して良い労働環境を提供できます。こうした環境により24時間365日操業でき、投資を最大化し、1機当たり何百万ドルもする機器のコスト削減に貢献します。新たなテクノロジーによって新たな作業員を呼び込み、急速に定年に近づいている労働力を埋め合わせるための、より多様な人材を確保できます。
鉱業をさらに詳しく掘り下げ、自律運行への動きが事業面で真の価値をもたらしながら生活を改善している点に注目し、これを配送センターや石油・ガス、製造業などの他の産業にも応用する方法を見てみましょう。
アナログからデジタル、自律運行への道
鉱業にとって自律運行の最初の一歩の多くは、ドライバーに鉱業現場から処理場までの正確な経路を提供する、デジタルディスパッチ(割当処理)です。顧客の1社は、IoT無線メッシュインフラを自社の鉱区にわたって導入し、遠隔地には移動通信や無線機能がないので、モバイルフリート上でアプリを配信しています。これらは、トラックが経路を見失わないようにするだけで、6カ月以内に投資利益を達成しました。デジタルディスパッチによって、鉱業会社は最適な経路を特定でき、それをドライバーに提供して、経路から逸れた場合はそれを見抜くことができます。
遠隔操作による安全性とスピード
遠隔操作は、デジタルプロセスをもう一歩自律運行に近づけます。ここでは1人の遠隔オペレーターが、1つのジョイスティックでブルドーザー4台を操作することができます。これはオペレーターにとってより安全なだけでなく、かなりの時間と費用を節約します。 坑内採鉱に関連するあらゆる困難を考えてみてください。作業者を宿舎から遠く離れた坑内現場に運ぶだけでも、バス移動で片道1時間以上かかる場合があります。そして暑い坑内では、作業員は涼むために設備から離れて避難場所に行く必要があります。これは経費がかかるだけでなく、作業者の安全が確保できません。産業用IoTのアクセスポイントとスイッチによって動く遠隔操作によって、坑内の遠隔装置を作動させるのに数分で済みます。
自律運行で正確、効率、そして安全を実現
自律運行によって露天採掘と運搬トラックがどのように変わりつつあるかを見てみましょう。稼働の規模を理解するために、これらの運搬トラックが、最大積載量約400トンを運搬でき、長さは最大で大型ピックアップトラック3台分もあることを考えてみてください。自律運行では、トラックはGPSの座標を利用して、自ら走行してショベルに「自動的に到着」します。ショベルは採掘した鉱石を運搬トラックに落とします。それから運搬トラックは処理場または粉砕機に向かいます。
自律運行によってこのプロセスをより精密にすれば、より多くの収益が上げられます。このプロセスでは、鉱石の価値のない土、すなわち「表土」は処理場に行くだけです。反対に、価値のある土は粉砕機に向かいます。手作業によるディスパッチシステムが間違いを犯せば、文字通り利益を捨てていることになります。今や自律運行により、経路を見失う確率を最小限に、あるいは排除することさえ可能です。
自律運行と遠隔操作は効率を超えて、安全面の大きな問題も解決します。これらの大型車両には、時には大型ピックアップトラックさえ気付かずにひいてしまいかねない大きな死角があります。車両やその他の装置の位置と行動について可視性と制御を確保することは命を救うことに繋がります。
自律運行を行うために、長距離で低帯域を提供する低周波から、より高いデータレートのニーズに対応するマイクロ波まで、多くのアクセス技術が利用可能です。5Gは低遅延と高信頼度を約束しますが、現状はWi-Fi 6とCisco Fluidmeshなどが選択肢です。これでエッジでの意思決定を行うための信頼度と能力を確保するとともに、ビデオ監視などで運搬データを支援することができます。
Cisco Fluidmeshを利用して、主要データセンターの建物から鉱山付近のタワーまで高スループットニーズを満たすためにポイント・ツ―・ポイント(PtP)を行うことができます。これはタワーから露天採掘地域内のトレーラーまでポイント・ツ―・マルチポイント(PtMP)を利用するための強力な基礎を築き、ビデオ、斜面安定レーダー、排水ポンプ用の帯域幅を拡大します。これらのトレーラーは、自律運行のためのモバイルフリート上に設置されたCisco Fluidmeshエンドポイントをサポートできるのに加えて、アクセスレイヤーのためのWi-Fi アクセスポイントもサポートできます。
Cisco FluidmeshとWi-Fiの両方を利用して、センサー向けにタブレットや電話、クライアントなど一般的な端末装置の利用が可能になります。LoRaWAN は電池式センサーのすべての接続に必要な接続性をもたらす一方、 LIDARがGPS追跡に動力を供給します。自律運行に必要なセキュアで信頼できるネットワークを実現するために、各アクセスレイヤーにはすべき仕事があります。
カスタマーストーリー:フォート・ウィンゲート
爆発物の掘り出しなど、きわめて危険な環境における自動操作を巡る困難の一例を挙げましょう。シスコの顧客であるニューメキシコ州のフォート・ウィンゲートではすべてを遠隔操作で行わなければなりません。ドローンの操縦ではなく、実際の地雷原で重い掘削装置を遠隔操作しているのを想像してみてください。こうしたオペレーターの下す判断の1つ1つが、リアルタイムで状況認識を提供する高解像度ビデオを頼りにしています。
操作の内部
フォート・ウィンゲートは、ブルドーザー3台と掘削機3台を利用して広い範囲から武器を除去する必要がありました。機能中の武器をかき乱すことに付随する危険が理由で、同社は、オペレーターが装置を安全な距離から遠隔で操作できる遠隔システムが必要でした。このシステムは重機を最大3台同時に操作することが可能で、これを業界では「スリー・チェアーズ(3つの椅子)」と呼んでいます。
課題
無線通信の観点からすれば、遠隔操作は困難な応用です。低遅延、シームレスローミングと、常に直接の通信が欠かせない各掘削機からのライブでのビデオ配信のために相当のアップロード速度が求められます。
その地域の規模と、利用可能なインフラの制限を考慮すると、無線の受信範囲は、広範囲にわたっていなければなりませんでした。さらに、除去された鉱材や同じエリアで作業しているその他の車両が、見通しを悪くする恐れがあり、これは一般に信号の弱まりを引き起こす問題です。信号の悪化は、それがたとえ2分の1秒であっても、遠隔操作を停止させてしまうのが普通です。
結果
Cisco Fluidmeshは、ミッションクリティカルなリアルタイムのビデオ画像を支える低遅延の 無線ネットワークを実現しました。MPLSベースのプロトコルを採用することで、Fluidmeshのソリューションはネットワーク要件を上回り、すべての整地車両についてハンドオフタイム0ミリ秒と遅延10ミリ秒未満を保証することができました。
信頼性をさらに高めるために、Fluidmesh ワイヤレスMPLSネットワークも車車間メッシュネットワーキングをサポートし、アクセスポイントにクリアな信号が返ってこない場合、トラックがメッシュに参加できるようにします。
次の話題は – 港湾の複雑な世界
私たちのブログ「自動化で業界改革(Transforming Industries with Automation)」の最終回は、港湾の自動化に焦点を当てます。どのように港湾が自動化して、それを自分の業界に適用できるのかを詳しく知るのは興味深く、ためになると思います。
その間、あらゆる場所のあらゆる資産について、シスコの産業向けIoT製品群と新しいオン・ザ・ゴー・ソリューションとの接続方法を詳しく知り、私たちがCyber Visionでどのようにデバイスを発見してセキュアにしているか、そしてインテントベースネットワーキングがシンプルで大規模なIoTに必要なオートメーションを実現しているかについて知識を深めてください。
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*ブログ筆者:シスコバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー、IoTプロダクト マネージメントのヴィカス・ブターニー(Vikas Butaney)
* 米国で発表されブログの内容は、以下をご参照ください。
https://blogs.cisco.com/internet-of-things/mining-an-essential-industry%e2%80%aftransforming-with-automation%e2%80%af