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中川いち朗 | 2021 年 10 月 21日
シスコシステムズ合同会社 代表執行役員社長

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「史上初の1年延期」、「コロナ禍による無観客」と異例づくめの開催となった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)。その一方で、東京2020公式ウェブサイトの累積訪問者数は約1憶9,570万人(2021年9月5日時点)にのぼり、デジタルで国内外の数多くの人々と繋がる大会となりました。「The Biridge to Possibile:すべてがつながれば、あらゆることが可能になる」。シスコはこの信念のもと、東京2020大会では、ネットワークとIoT技術にとどまらず、新たにデータを活用したアスリート支援のほか、ダイバーシティ / サイバーセキュリティ人材育成の支援に取り組んでまいりました。

東京2020大会は、ベイエリア、ヘリテイジエリア、東北地区に、43 競技会場とテクノロジーオペレーションセンター(TOC)IBC(国際放送センター)/ MPC(メインプレスセンター)、選手村という3つの大規模施設が分散。大会ネットワークには186,000台のデバイスが接続され、シスコ製品はロンドン、リオを超え3大会中最多の22,000台が導入されました。シスコはオリンピック史上最多となるこれらの拠点をカバーするネットワーク、および、監視カメラ6,000台超とセンサー3,000超を配置した大規模IoTネットワークの構築・運用を支援。シスコのネットワークエンジニア50人は24時間体制で、ネットワークを監視しました。トータル・インターネット・トラフィックは過去最大の1.6PBを記録しましたが、大会期間中、ネットワーク障害を発生させることはありませんでした。

東京2020大会では、NBC Olympics の国際放送センターのオペレーションがオリンピック史上初めてオール IP化されました。シスコはNBC Olympics による 7,000 時間以上の放送をサポートするネットワークの構成に 6,700 台以上のシスコ製品および、オールIP 配信を実現するためのネットワーキング テクノロジー ソリューションを提供しました。放送と通信の融合により、大会をテレビ放送だけでなく、様々なデバイスで体験していただけたのではないかと考えています。

シスコはかねて、卓球の石川佳純選手と張本智和選手、パラリンピック陸上競技の実業団グロップサンセリテ ワールドアスリートクラブ所属の松永仁志選手兼監督(障害クラス T53)、生馬知季選手(障害クラス T54)と「アスリートアンバサダー契約」を結び、Webexなどのコラボレーションテクノロジーを活用して競技活動をサポートしてきました。東京2020大会では、試合映像の視聴やデータ分析アプリの提供のほか、大会期間中はWebexのボット機能を使い、試合後約30分で選手が見たい場面だけを簡単に呼び出し、再生できるサービスを石川選手と張本選手に提供しました。オリンピックはトーナメントで、「試合の合間」という限られた時間で、次の対戦相手の直近の試合について分析結果を提供する必要があったのです。以前はデータ入力だけで3~4時間かかっていましたが、石川選手やコーチの意見を聞いて分析項目を絞り込むなど軌道修正を図り、実現することができました。

シスコは東京2020大会に向けて新たにダイバーシティの普及とIT人材の育成にも力を入れてきました。

2020年10月、東京都新宿区に日本で初めてとなる常設の大型総合LGBTQ+センター「プライドハウス東京レガシー」がオープンしました。東京2020公認プログラムとして、大会期間中はLGBTQ+とスポーツ・文化・教育などに関する 情報発信企画をオンラインとオフラインを交えながら展開しました。シスコは最上位スポンサーとしてこのプロジェクトを支援。施設内のネットワーク環境やコラボレーションツールを提供し、記者会見やイベントなどさまざまな場面でWebexを活用していただきました。

一方、シスコは2017年から約4年間、東京2020公認プログラムとして、サイバーセキュリティ スカラシップ プログラムを提供しました。日本で不足しているとされるサイバーセキュリティ人材の育成にフォーカス。全国170校以上の大学・大学院、専門学校、高等専門学校から6500人以上が参加しオンラインコースを受講したほか、50名以上の教員の方々にCCNA Cyber Ops. 認定講師トレーニングを提供しました。5名のプログラム卒業生が2020年度、2021年度新卒入社として、シスコやシスコ販売パートナーに就職するという実績も生まれました。

シスコは、デジタル変革の支援を通じて、日本の未来に貢献したいと考え、東京2020プロジェクトに取り組んできました。コロナ禍を背景に、全世界で急速なデジタルシフトが起き、日本においても、リモートワークが定着し、教育や医療もオンラインでの提供が拡がりつつります。ポスト・コロナの時代は、デジタルとフィジカルの活動が融合する新しいハイブリッドな世界になるでしょう。今こそ、デジタル化の恩恵を受ける人々と受けづらい人々の格差を解消し、誰ひとり取り残されない社会を作るチャンスだと確信します。

「To Power an Inclusive Future for All:すべての人にインクルーシブな未来を実現する」。シスコは企業活動のパーパス(存在意義)として、新たにこのスローガンを掲げました。インクルーシブとは、包括的という意味で、誰もが分け隔てなく受け入れられ、認められていると実感できる状態です。シスコはその実現のため、企業のDX化と社会全体のデジタイゼーションの支援に重点的に取り組んでいます。

ポスト・オリンピックの新時代を迎えた今、シスコは「インクルーシブな未来」に向け、引き続き、デジタルテクノロジーで日本の経済成長と安心・安全な社会の実現に貢献してまいります。