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シスコシステムズ合同会社
代表執行役員社長
中川 いち朗
「すべての人にインクルーシブな未来を実現する」 ― 駅や交通機関あるいはテレビで、このメッセージをご覧いただいた方もいらっしゃると思います。これは、シスコが目指すパーパス、企業としての存在意義です。「インクルーシブ」とは包括的という意味で、誰もが分け隔てなく受け入れられ、認められていると実感できる状態です。ダイバーシティーという言葉はかなり浸透しましたが、インクルーシブは、さらにより積極的に、すべての人を受容していく姿勢を表しています。あらゆるものがつながり、誰もがどこにいてもテクノロジーの恩恵を受けられる、そうした未来の実現こそがシスコの目的であり、私たち全社員がその目的意識を共有しています。
危機をチャンスに ― 加速する日本のデジタルシフト
新型コロナウイルスの感染拡大もあり、世界的に急速なデジタルシフトが起きました。テレワークや遠隔教育、遠隔医療など、ネットワークとデジタルテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速しています。日本でも行政、公的機関、社会がコロナ禍への対応を進める中で、デジタル化の遅れに伴う社会的な影響が顕在化しました。今年9月にデジタル庁が設置されますが、デジタル化への課題に地方を含めて横断的に対処する必要性が広く認識されるようになったからでしょう。
しかし、日本企業も変わってきています。テレワークを例にあげると、日本での実施率は緊急事態宣言前には26%、緊急事態宣言後は67%に上昇しました。パンデミック以前から8割を超えていた米国と比較すればまだ遅れていますが、働き方改革を中心にDXは確実に進展しています。
働く人々の意識も変わりつつあります。シスコジャパンでは昨年2月以降いち早く全社的な在宅勤務に移行し、現在も継続しています。社員への調査を行ったところ、コロナ禍以前は社員の56%が「毎日オフィス」で働いていましたが、今では「毎日」を希望する社員はたった2%。約8割は「月2~3回」必要なときにだけに出社すると回答しています。リモートは、柔軟で多様な働き方を実現し、生産性も向上すると社員が実感を深めたのだと思います。
今はこの危機をチャンスと捉え、デジタル変革へと舵を切るべき重要な転換期です。パンデミックは一過性のものではありません。持続可能な社会を作るためにも、私たちはニューノーマルな時代に合わせて価値観を変えなければなりません。そして、今こそ、デジタル化の恩恵を受ける人々と受けづらい人々の格差を解消し、誰ひとり取り残されない社会を作る機会だと考えています。
シスコジャパンの重点戦略 ― 「日本企業のDX支援」と「日本社会全体のデジタル化推進」
シスコジャパンでは、日本企業のDX支援と日本社会全体のデジタル化推進を重点戦略とし、それを支える変化に即応できるプラットフォームの提供に注力しています。
ITがビジネスそのものを変える可能性を持つ時代です。日本企業のDX支援に関しては、働き方改革や工場のIoT化、新しいサービスと顧客体験の創出、スマートシティーそして5G時代への対応など、あらゆる局面でデジタル化を通じて企業のビジネス変革を支援していきます。そのために、マルチクラウドに対応したエンドツーエンドのネットワークにおける自動化、可視化、セキュリティといったDXに不可欠で、変化に柔軟に適応できるITソリューションを提供することはもちろん、業種・業界を超えたビジネス変革のための具体的なビジネス開発支援やグローバルな先進事例に取り組んだ経験、実績を生かしたコンサルティングサービスを提供していきます。
日本社会全体のデジタル化の推進という観点では、シスコは「カントリー デジタイゼーション アクセラレーション」という、世界主要各国のデジタル化を支援する戦略的な投資プログラムを展開しています。現在、世界40カ国で900以上のプログラムを進めており、既に日本でも、公共サービス、教育、テレワーク、医療、物流、規制改革、5Gという7分野での社会のデジタル化に貢献しています。今後は、スマートシティー開発や脱炭素社会実現への貢献も目指していきます。
ハイブリッドワークを実現するプラットフォーム ― 「Webex」と「Cisco SASE」
コロナ禍でテレワークの普及やオフィスの縮小など、働き方は大きな転換点を迎えています。ワクチン接種の拡大で従業員は徐々にオフィスに戻ってくると予想されますが、完全に元に戻ることはないでしょう。今後は従業員が最も生産性が高まる働き方や働く場所を選ぶ「ハイブリッド型」へとシフトすると考えられます。また、そこで課題となるのがセキュリティです。オフィスと同様、自宅やシェアオフィスなどオフィス外で働く従業員のセキュリティを確保しなければなりません。これらの課題に対し、シスコは「ハイブリッドワークスタイルソリューション」と、「ゼロトラストセキュリティプラットフォーム」の2つを重点的に提供していきます。
ハイブリッドな働き方では、最適なコラボレーション体験を提供するクラウドアプリケーションの「Webex」が中心となります。どこからでも、どんなデバイスからでも接続でき、対面以上のコミュニケーション体験を得られるWebexは、過去9か月の間に800以上のイノベーション、新機能を実装し、社内だけでなく顧客とのビジネスシーンでも活用してもらうツールへと進化しています。
セキュリティに関しては「Cisco SASEプラットフォーム」を展開していきます。創業以来35年以上にわたりネットワークソリューションを提供してきたシスコは、安全なネットワークに関しては他の追随を許さないノウハウを持っています。企業内ネットワークだけではなく、クラウドを含めたインターネットのあらゆる場所でセキュリティを守る製品をそろえているのはシスコだけです。それらをネットワークと統合し、シンプルなクラウドサービスで提供します。セキュリティ脅威インテリジェンス情報を分析する組織、「Cisco Talos」により、常に最新のセキュリティ情報提供を行っていることも大きな強みです。
ただ、働き方改革は、ITだけでなく、それを使いこなす業務プロセスと企業文化(カルチャー)の醸成が欠かせません。シスコジャパンは2018年に続き、コロナ禍にありながらも2021年の「働きがいのある会社」大企業部門で第1位に選ばれました。働き方改革に着手した2001年当初は生産性向上を目的に「働きやすさ」を追求していましたが、現在は社員のモチベーションを高め、イノベーションを加速させる「働きがい」の向上を目指すようになっています。働きがいを高める象徴的な取り組みとして、価値観の共有があります。価値観の共有は企業カルチャーの重要な要素ですが、昨年、リモートワークのなかで全社員がオンラインで参加し、自分たちの言葉で目指すべき価値観を表した行動規範を作り上げました。そして、それを日々思い起こすことができるようカード化し、全社員が常に携帯しています。
全員が会社のパーパス、ビジョンそして価値観を共有し、互いに信頼し、各自が責任感を持って多様性とより高い成果を目指す、「自由と自律」の融合、それがシスコの企業文化であり最大の強みです。
すべての人にインクルーシブな未来を実現するために
お客様の成功こそがシスコの成功です。その基盤となるのが、人財と企業文化です。社員一人ひとりがお客様にどう貢献できているか、お客様の成功を強く意識し、それが働きがいと感じる、シスコジャパンをそういう会社にしたい、と私は考えています。
一方で、社会のデジタル変革は、シスコだけでは成し遂げられません。パートナー企業はもとより、業種・業界を超えて今まで接点のなかった企業とも協業し、「競争から共創」の時代をリードしていきます。
すべての人にインクルーシブな未来を実現するために、シスコジャパンは、全社を挙げて取り組んでまいります。